ユーザーの被害

 

 

■ クローセンシステムの設計ミスによって どのような問題が出るのか

設計ミスの回路の図

  • ECUが常時作働状態になってしまう為、早期に寿命なり故障なり不具合が出る可能性がある。


  • 無駄に電気が流れることによって バッテリーが消耗し、その充電の為に余分にガソリン代がかかる。 年単位のスパンで考えれば、チリも積もれば山となり、そこそこの金額になるかもしれない。


  • 設計ミスの為に リレー装置は不要になる。 ユーザーは無駄な物にお金を払わされている。

以上のような問題点も指摘しておきたいが、やはり一番の問題は バッテリー上がりである。 直接的な危険性はないものの、被害は多くのユーザーに及ぶ。 エンジンがかからず車が使えない、救援を呼ばなければならない、という状況は、少なからずの負担である。
しかも、やっかいなのは クローセンシステムの設計ミスが分かりづらいことである。 ディーラーに相談に行っても解決せず、バッテリー上がりを心配しながら車を使い続けることになる。

以下、この問題を取り上げるが、まずはどの程度バッテリーが上がり易くなるのか、という問題から。


■ どの程度バッテリーが上がり易くなるのか

はじめに、暗電流(あんでんりゅう)という言葉を説明しておく。
暗電流とは、車のキーを切った状態で流れる電流のこと。 キーOFFでも 時計にはバッテリーから電気が来ているし、マイコンのメモリーにも 記憶保持の為 常に電気が供給されている。 また、リモコンでドアキーの開閉が出来るようになっていると、そのセンサー部も常に電気を必要とする。 このように、キーOFF状態で流れる電流のことを暗電流という。

暗電流値は車種や装備によって異なるが、欠陥クローセンシステムの取り付け対象車の場合 9mA〜18mA位である。 最高値は、キーレスエントリーやALB(ABS)、トラクションコントロールを装備したアコードインスパイアのオートマチック車で、その値は18mA強。 装備が減ったり車格が下がると 暗電流値も下がるが、下は9mA位である。

私の車は最高値の車に該当し、下の画像は クローセンシステムを取り付けていない時の暗電流値を示す。

一方、欠陥クローセンシステムの暗電流値は おおよそ36mAである。
下の画像は、クローセンシステムのECUがボディとの接触によって通電し、その値が36mAであることを示している。 欠陥クローセンシステムでは、ECUは絶縁なしにボディに取り付けられる為 写真と同じ状況である。

以上のことから、車に欠陥クローセンシステムを装着すれば、9mA〜18mAという元々の暗電流にプラスして、36mAの暗電流が余分に流れることになる。

車を運転する人なら誰でも知っているが、車を使わず何日も放置していると、バッテリーが上がり エンジンが始動できなくなる。 車を使わない状態では、バッテリーは充電されることなく 暗電流によって消耗する一方である。 そして、ついにはエンジンをかける力をなくしてしまう。 通常は そこに至る前に車が使用され、エンジンがかかると発電機が働き バッテリーは充電されることになる。

このように、バッテリー上がりを起こさない為には、車を長期放置することなく そこそこの時間エンジンをかけておくことである。
しかし、欠陥クローセンシステムが装着されていると、暗電流が何倍にもなり、長期放置とは言えない状況でバッテリーが上がることになる。

上記の暗電流値から分かるように、バッテリー上がりが起きるまでの放置日数は、3分の1 〜 5分の1に短縮してしまう。 一例を挙げれば、1ヶ月放置するとバッテリーが上がる車があった場合、これに欠陥クローセンシステムを取り付けると 6日〜10日の放置で上がってしまうのである。

また、具体的に何日でバッテリーが上がるのか、という実際の日数については、ホンダ側のデータがある。 担当者B氏の話では、新品で満充電のバッテリーの場合、欠陥クローセンシステムを装着していると 20日〜25日の放置で上がるとのことである。
新品で満充電という最高の条件下で20日〜25日である。 実使用においては、もっと短期のバッテリー上がりが普通に起こりうる。


■ 被害は多くのユーザーに及ぶ

クローセンシステムの欠陥の程度からすれば、多くのユーザーに問題を与えるはずである。
バッテリーが1週間程で1ヶ月分も放電するとなると、サンデードライバーには切実な問題である。 遅かれ早かれバッテリー上がりを起こすであろうし、バッテリーの充電状態をチェックしているユーザーなら、充電不足の状態が続くのを見ることになる。

普段毎日乗るような人であっても、しばらくの間乗らないこともあろう。 ある車関係の本に、「バッテリーを上げない為に1ヶ月に1回はエンジンをかけましょう」などと書かれていたが、クローセンシステム装着車には全く当てはまらない。 最高でも3週間程しか持たないのである。
車の使われ方は様々であるが、「欠陥がなければ バッテリー上がりを起こさずに済んだのに」というケースは いくらでも発生するであろう。

さらに、クローセンシステムの欠陥によるバッテリー上がりは、一度起こせば終わりというものではない。 バッテリー上がりが起きても、クローセンシステムの欠陥に気付くことはない。 ディーラーに相談しても、クローセンシステムの欠陥は分からないであろう。
結局のところ、多くのユーザーが バッテリー上がりを心配しながら車を使い続けることになる。

ところで、ソニー損害保険会社の広告によれば、日本のドライバーの7割は 年間走行距離 8000km以下とのことである。
私自身がバッテリー上がりを起こした状況から言って、欠陥クローセンシステムのユーザーで年間走行距離 7000km程度の場合 1年に3回程度バッテリー上がりを起こしそうである。
ソニー損保の広告には 年間走行距離 3000km〜5000kmの人の例が出ているが、これが欠陥クローセンシステムのユーザーなら バッテリー上がりが切実な問題となろう。

  

言うまでもなく、バッテリー上がりは ユーザーに少なからずの負担を強いるものである。 突然車が使えなくなると、大事な用に間に合わないとか、タクシーを使うとか…、また、救援を呼べば そこそこの費用もかかる。
また、はっきりした理由もなしに 簡単にバッテリーが上がるとなると、バッテリーの寿命か不良と判断される可能性が大きい。 買い換えられれば数万円の損となるし、購入間もないバッテリーであれば 販売店とトラブルになっても おかしくはない。


■ ディーラーに相談しても 問題は解決しない

クローセンシステムの欠陥はバッテリー上がりを引き起こす、このことは容易に分かる。 しかし、逆に、バッテリー上がりという症状から クローセンシステムの欠陥を突き止めるのは容易ではない。
このことが何を意味するかと言えば、欠陥クローセンシステムのユーザーが 「バッテリーが上がり易い」と訴えても、容易には問題は解決しない、ということである。

バッテリー上がりという症状が出ても、クローセンシステムの欠陥は隠れたままである。 手間暇かけて車を詳しく調べない限り 気付かれることはない。 ディーラーの通常の対応では、クローセンシステムの欠陥は分からないであろう。
実際、ホンダによれば、ディーラーがクローセンシステムの欠陥に気付き 報告を上げてきた例はないとのことである。

クローセンシステムの欠陥の程度からすれば、少なからずのユーザーがディーラーに相談したであろう。 しかし、誰一人問題は解決しなかったわけである。
私の場合、ディーラーは車の乗り方が少ないのが原因と考えていた。 バッテリー上がりが欠陥によって発生していることを、ディーラーは全く認識できなかった。 また、月刊誌のケースでは、ディーラーはバッテリーに不具合があると考え ユーザーに交換を勧めている。

もしも、クレーム内容がオイル漏れ、装置の故障、部品の破損といった不具合なら、話は簡単である。 ユーザーがその不具合に気付き、ディーラーに持ち込めば、簡単に修理が受けられる。 不具合や原因の把握が極めて容易だからである。
しかし、「簡単にバッテリーが上がってしまう」、「いつもバッテリーが充電不足を示している」といったクレームから、クローセンシステムの設計ミスにたどり着くまでには遠い道のりがある。

決してディーラーが怠慢というわけではなく、クレームに真面目に対応されるとしても 解決は望めそうにない。
ユーザーのクレームを聞き、ディーラーが 「車の乗り方が少ない」、「バッテリーに問題がある」と考えるのは、それなりに妥当であり致し方ない。

クローセンシステムの欠陥の性格上、ディーラーはクレームに対処できないと見るべきであろう。 このような不具合の場合、メーカーがきちんと対策を取らなければ、ユーザーはいつまでも問題を抱え続けることになる。

私は、ホンダに対して何度も修理対策を要求したが、それは、ディーラーでは解決が望めない欠陥だったからである。 オイル漏れのような不具合なら、私もうるさく言わなかったであろう。 分かりやすいトラブルであれば、ディーラーに相談すれば簡単に片が付くからである。

分かりにくく、見付けにくい欠陥である故に、メーカーは一層の責任を持って対処すべきであろう。 放置されれば、ディーラーで解決されることもなく ユーザーは問題を抱え続けざるをえないからである。
しかし、実際には、分かりにくく、見付けにくい欠陥である故に ホンダは隠すことを選び、ユーザーは問題を抱えたまま放置されたのである。

以上、欠陥によって ユーザーがどのような不利益を受けるのかを書いてきた。 これらのことは ホンダも分かっているはずのことであり、その上での欠陥放置である。
「分かりにくい欠陥だから隠しておけばよい。客が困っていようとも責任を取りたくない」、そんな思いをホンダ側に感じないわけにはいかない。 自らの利益と保身しか考えず、ユーザーに損害を与えても構わないとの態度。 これが、ホンダの顧客重視なるものの実情である。

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