欠陥が判明するまでの経緯

 

 

平成元年10月下旬、アコードインスパイアというホンダの車を購入した。 そして、11月6日頃 クローセンシステムをディーラーで取り付けてもらう。 その後しばらくして バッテリーのインジケーターが充電不足を表示しているのに気付いた。 もちろん、この時点では、クローセンシステムが原因とは分かるはずもない。

下の画像は 最近購入したバッテリーの写真であるが、当時のバッテリーにも同じようなインジケーターが付いていた。 インジケーターは充電状態を示すものであり、その表示が充電不足となっていたわけである。

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インジケーターの原理を説明しておくと、比重を調整した青色の粒が バッテリー液の中で浮くか沈むかによる。 バッテリーが充電された状態であれば、バッテリー液の比重が大きく 青色の樹脂粒は浮き インジケーターは青色を表示。 逆に、充電不足の状態では、バッテリー液の比重が小さく 青色の樹脂粒は沈み インジケーターは白色を表示するわけである。

さて、充電不足の表示に最初に気付いたのは 11月下旬頃であった。 以来、インジケーターをチェックするのが習慣になり、いつも充電不足の表示を見ることになった。
当然気がかりであり、バッテリーが上がらないように、無駄にアイドリングしたり エンジンの回転数を高めて走行したことがあった。 また、しばらく車を使わない時には バッテリー端子をはずしたこともある。

しかし、なぜ充電不足なのか分からなかった。 そこそこ走行距離もあり、車の乗り方が原因とは思えなかった。 バッテリーが古ければ 寿命ということも考えられるが、車は新車であり 当然バッテリーも新しい。
原因を推測すれば、もちろん、バッテリーが不良品という可能性もある。 しかし、それ以前に、インジケーターが信頼できるのかが気になった。 インジケーターの青色粒の比重が狂っていれば 誤った表示をしてしまう。

当時は比重計を持っていなかった。 インジケーターが正確なのかどうか、バッテリーが本当に充電不足なのかどうか、確かめることができなかった。
そこで、とりあえず私が下した結論は、インジケーターを悪者にしておくことであった。 インジケーターの表示が不正確ということにしておけば、バッテリー上がりを心配しなくて済んだ。

しかし、平成2年3月11日、車で出かけようとすると バッテリーが上がっていた。 JAFを呼びエンジンを始動してもらった。
下の画像は JAFから渡されたJAFロードサービス書である。 バッテリー上がりを証明するものであり、ホンダにも提示済みである。

実際にバッテリーが上がったことによって、インジケーターの表示が正しいことが分かった。 そうなると、何故バッテリーがいつも充電不足なのか、という問題に直面せざるを得なくなった。

そこで、ディーラーへ相談に行くと、「とりあえずバッテリーを充電しましょう」ということで充電してもらった。 しかし、一週間もしないうちに再び充電不足が表示された。
引き続き相談に行ったが、ディーラーは車の乗り方が少ないのが原因と見たようで、車やバッテリーを調べるようなことはなかった。

しかし、私には車の乗り方が少ないとは思えなかった。 実際、そこそこの走行距離があった。
私にとってアコードインスパイアは3台目の車であるが、それまで一度もバッテリー上がりを起こしたことがない。 同じような使い方をしているのに、アコードインスパイアではバッテリーが上がり 慢性的に充電不足状態であった。

ディーラーは車の乗り方が少ないのが原因と決め込んでいたようである。 何度も相談に行くと、「あまり気にしないほうが良い」と言われるようになった。 言い方は丁重であったが、病気扱いされている気がして 相談に行きづらくなった。
仕方ないので、別のホンダクリオ店に相談に行った。 二ヶ所行ったが、その店で車を購入したわけでもなく、ほとんど相手にされなかった。

こうなると、自分で何とかするほかなかった。 充電器を購入して バッテリー上がりに対処する一方、自分で原因を調べることにした。 比重計、テスター(電流、電圧、抵抗測定器)、アコードインスパイア用サービスマニュアルを購入した。

私は機械工学科を卒業したが、自動車についての知識は全くなかった。 そこで、図書館や本屋で バッテリー、発電機などの車の電気関係を調べ、バッテリーに関しては こまめに比重のデータを記録した。 また、サービスマニュアルは5センチ近い厚みの本であるが、全て目を通し車を調べた。

こうして、車やバッテリーを調べていくうちに、いくつか分からないことが出てきた。
平成3年1月、ホンダ大阪相談室宛に手紙を出した。 バッテリーが上がり易く困っているので、分からないことを教えて欲しいという内容だった。 いくつかの質問を書いたが、その一つが、「あるヒューズのところで 暗電流(キーOFFでの電流)が突出しているが問題ないのか」というものだった。

大阪相談室のK氏という方に担当して頂くことになり、数回電話で話をした。 そして、ホンダテクニカルのH氏に 実際に車を見てもらうことになった。
1月19日、ディーラーの整備工場でH氏に車を調べてもらうと、暗電流の多さはクローセンシステムによることが分かった。 そこで、製造元ホンダアクセスに問い合わせると、リレーの故障が原因で電気が流れ放しになっているとのことであった。

そこで、修理としては リレーだけを交換すれば良いのだが、何故か、ディーラーには新しいクローセンシステムがセットで送られてきた。
付け替えは自分でやることにしたが、どういうわけか、新しいクローセンシステムでも同じ症状が出た。 車のキーを切っていても、電気が流れ放しなのである。

1年以上も時期を隔てた製品に 同じ症状が出るとなると、何かミスが疑われた。 そこで、自分で調べていくと、クローセンシステムのECU( Electronic Control Unit )とボディとの間が絶縁されていないのが原因らしい、と分かった。 それをレポートにまとめ、2月21日ディーラーからホンダの方へFAXで送ってもらった。

数日して、ホンダアクセスから 「ご指摘の通り 絶縁対策をとっていませんでした」という電話があった。
その翌日にはディーラーから電話があり、設計ミスを認めた上で、修理方法についての説明があった。
また、大阪相談室のK氏からは、「絶縁対策を忘れていたようで 大変ご迷惑をおかけしました」という電話があった。 その電話の中で、リコールになるのか尋ねたところ、「リコールになるかどうか分かりませんが、現在何らかの対策を検討しております」とのことだった。


以上が、設計ミスが判明するまでの経緯である。

月刊誌の記事では、ホンダが設計ミスを認めた折、私が 御礼として5万円の商品券をもらったとか、電流計等を買い取ってもらったと書かれているが、これは記者の方の勘違いである。 これは ずっと後の話で、当初、ホンダが何かをしてくれたことはない。 K氏からの電話で 簡単な謝罪の言葉があっただけである。
また、私の方から 何かホンダに要求したこともない。 ホンダにもディーラーにも 一言の苦情も言ってはいない。

上に書いたように、私は、バッテリー上がりを起こしたり、充電器を購入したり、或いは、原因を調べる為に 多くの時間やお金を費やしていた。 本当は文句の一つも言いたいところであった。
しかし、誰にでもミスはあるので仕方がないとの思いがあった。  ホンダが 「修理対策を検討している」と言っていたので、きちんと対策を取ってくれればそれでいい、と思った。

しかし、その8ヶ月後 欠陥が放置されているのを知って かなり頭に来た。 欠陥を知りつつ放置するのは許せなかった。 私と同様、バッテリー上がりで困っているユーザーが多くいるはずであった。
抗議の手紙を出し、修理対策を取るように求めた。 この要求が手紙の主旨であったが、末尾に、ホンダ側の落ち度で被った損害を補償してくれるよう付け加えた。 欠陥を放置するような企業に温情を示すこともないと思った。
5万円の商品券とか 電流計等の買い取りの話は、これ以降のことである。

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