何故ホンダは修理対策を拒むのか

 

 

ホンダが修理対策を拒む理由は、まず 費用がかかるということがある。 また、ユーザーの信頼低下やイメージダウンを嫌ったという面もある。 しかし、おそらく一番の理由は、修理対策を取れば ユーザーに欠陥を知られてしまい 補償問題が頻発することにある。

設計ミスが判明した時には、1年以上前から 数千個(ホンダによれば1801個)の欠陥品がユーザーに渡っていた。 私の場合、設計ミスによってバッテリー上がりを起こし 充電器を購入したりしていたが、このような例は多々あるはずである。 つまりは、設計ミスが判明した時点で、既に多くのユーザーに損害や迷惑を与えてしまっていた、ということである。

この点が、この欠陥問題を難しいものにしている。 通常の欠陥では、被害が出る前に、或いは、被害が少数件出た後に修理対策が取られる。 基本的には予防の措置であり、ユーザーに対する補償問題は多くない。
しかし、クローセンシステムの場合、欠陥が判明したのは 既に多くのユーザーに損害を与えた後だった。 ただ、ユーザー側に、製品の欠陥によって被害を受けたという認識がないだけのことである。

ユーザーは、バッテリー上がりを起こしていても、クローセンシステムの欠陥には気付いていない。 簡単にバッテリーが上がれば おかしいと思うものの、クローセンシステムの欠陥は容易には分からない。
バッテリー上がりという症状が出ても、原因欠陥は深く隠れていて、手間暇かけて車を詳しく調べない限り表に出ることはない。

欠陥クローセンシステムを取り付けると、暗電流(車のキーOFFでの電流)が何倍にもなり、多くのユーザーが影響を受けるはずである。 少なからずのユーザーが、バッテリー上がりを起こしたり、慢性的な充電不足を不安に思っているはずである。 しかし、ユーザーにはその原因が分からない。 製品の欠陥によって引き起こされていることを分からないでいる。

ディーラーに相談に行っても、「車の乗り方が少ない」 「バッテリーに問題がある」といった理由で片付けられるのが実情である。
私の場合、ディーラーは 車の乗り方が少ないのが原因と考えた。 月刊誌の体験談では、ディーラーはバッテリーに問題があると考え、バッテリーの交換を勧めている。 どちらのケースでも、トラブルが製品の欠陥によって引き起こされていることが 全く認識されなかった。

このような状況で、メーカーが修理対策を取ったらどうなるであろうか。
ユーザーは製品に欠陥があったことを知ってしまう。 そして、バッテリー関係のトラブルが 実はその欠陥によって引き起こされていたことを知ってしまう。 そうなれば、当然、補償なり迷惑料なりの要求が出て来ることになる。

補償や迷惑料を巡っては紛糾するのが常であろうし、トラブルの件数は並大抵ではない。
そうなると、ホンダ側としては、いっそ修理対策を取らないでおこう、ということになる。 設計ミスが気付かれ難いのを良いことに、放置することを選んでしまう。 そして、放置すればするほど その間にユーザー側の損害も大きくなり、一層対策を取りづらくなる。

ホンダが二の足を踏むとしたら その気持ちは理解できる。 誰だってミスを隠しておきたいし、客とのトラブルは避けたい。
しかし、メーカーは製品に責任を持たなければならない。 被害を及ぼす製品を放置しておいて良いのかどうか。 きちんとした製品を提供すべきことは、メーカーの基本中の基本であろう。

ホンダも企業であるからには 利益追求の思いは当然である。 欠陥を隠しておきたいという思いが働くのも仕方がない。
しかし、その気持ちに流され 責任を果たさないとしたら、モラルの欠如と言わざるを得ない。 交通事故で言えば、ひき逃げや当て逃げ相当である。 人に損害を与えておきながら 逃げ得を図るということ。

修理対策が取られなければ、ユーザーは問題を抱えながら車を使い続けることになる。 欠陥が放置されれば さらに被害は続く。 それは明白なことであり、それが分かった上での放置となると、悪質と言われても仕方がない。 交通事故を起こしながら 被害者を救護することもなく逃げていくようなものである。

私は 何度も修理対策を取ることを求め、ホンダからは うるさい輩として扱われ続けた。 しかし、修理対策を取るべきことは、本来ホンダ自らが律すべきことである。
ホンダ(ホンダの上層部)に問われていることは モラル、責任の自覚、或いは、自らへの厳しさである。

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