欠陥を巡るホンダの対応 − 詳細版

 

 

■ ホンダは最初「修理対策を取る」と言っていた

平成元年10月、アコードインスパイアという車を購入したが、バッテリーの上がり易いことが悩みの種だった。 何度もディーラーに相談するも原因が分からず、しまいには「気にしすぎ」とされてしまった。 別のディーラーに相談に行くも相手にされず、仕方なく自分で調べることとなった。

平成3年2月になって、やっとのことで原因が判明した。
クローセンシステムというホンダ純正の装置が常時作働状態になっていた。 車のキーが切られていても作働しており、電気は流れ放し、バッテリーが上がり易いのは当然の話であった。

なぜ常時作働状態になってしまうのか、その原因を調べてみると、設計上のミスが判明した。 ECU (Electronic Control Unit)というユニットを 車のボディに取り付ける際、絶縁が忘れられていた。 金属製のボルトや金具で取り付けるように設計してあり、この部分でアースが取られ、クローセンシステムは常に作働状態になってしまうのである。

これらのことをレポートにまとめ、2月21日 ディーラーからホンダの方へFAXで送ってもらった。
数日して 製造元ホンダアクセスから電話があり、「ご指摘の通り 絶縁対策を取っていませんでした」と、ミスを認める発言があった。
その翌日には、ディーラーから電話があり、設計ミスを認めた上で修理方法についての説明があった。 もっとも、私のクローセンシステムについては既に自分で修理してあり、ディーラーの世話になることはなかった。

その数日後、ホンダ大阪相談部のK氏からも電話があり、「絶縁対策を忘れていたようで 大変ご迷惑をおかけしました」と言われた。
K氏については、それ以前に数回電話で話したことがあった。 バッテリーが上がり易いのに悩まされていた時 相談部に手紙を出したことがあり、その折担当して頂いたのがK氏であった。

そのK氏からの電話の中で、リコールになるのか尋ねてみると 「リコールになるかどうかは分かりませんが 何らかの対策を検討しております」とのことであった。
私はその言葉に全く疑いを持たなかった。 欠陥品のユーザーのことを思えば、早急に修理対策が取られるものと思った。

当時の私には、クローセンシステムの欠陥が放置されることは 全く思いもよらないことであった。
私自身バッテリー上がりを起こしており、ユーザーの間でバッテリー上がりが頻発することは明白であった。 このようなことを承知しながら メーカーが放置するなどということは考えられなかった。 被害の拡大を防ぐ為にも 早急にユーザーに連絡が行くものと思っていた。

( 注 )

欠陥クローセンシステムのユーザーを調べるのは難しいことではない。
ディーラーで欠陥クローセンシステムの受注書なり受領書なりを調べればいいだけの話である。 業務が電子化されていれば すぐに判明するし、電子化されていなくとも伝票類は残っているはず。 クローセンシステムの欠陥が分かったのは、販売開始から1年と何ヶ月か経過した頃であり、税法上からも伝票類は保存されていなければならない。
購入者が分かれば車台番号も分かり、車の所有の変更があっても、クローセンシステムの所有者に連絡を取ることができる。


■ 8ヶ月後放置されていることが判明

車に欠陥があった場合、リコールを始め改善対策やサービスキャンペーンなどの市場措置があり、ユーザーの元にダイレクトメールで通知が行く。 クローセンシステムの設計ミスに関しても ユーザーを調べて通知が行くものと考えていた。

もっとも、何ヶ月たっても私の元には何の通知も来なかったが、おかしいという思いはなかった。 もともと私からメーカーに知らせた欠陥であり、自分で修理したことはディーラーに伝えてあったからである。 メーカー側が 「私については修理案内の通知は不要」と判断していることが考えられた。

しかし、ホンダがミスを認めて8ヶ月程経った頃、一応その後の経過を確認しておくことにした。
10月31日、大阪のお客様相談室に電話を入れた。 この時電話口に出られたのが 主任のA氏であった。 私はK氏と話したい旨伝えたが、あいにくK氏は配属替えとのことで、A氏と話すことになった。

余談になるが、A氏にとっては不運なことであったかもしれない。 たまたま私からの電話を受け、この後、クローセンシステムの欠陥問題の担当者になる。 会社が欠陥放置するのを正当化しようとすれば、嘘や屁理屈を並べるほかなく、気の毒な役割を担われることになる。

さて、そのA氏に、「クローセンシステムの設計ミスの修理対策はどうなったか」と聞いてみた。 しかし、クローセンシステムの不具合について全くご存知なかった。

電話の向こうでは 手元の資料を調べておられるようだった。 「純正用品も含めてホンダ製品に問題があれば、全て相談部に上がってきます」と言いつつ 5分ほど調べておられた。 しかし、結局何も出て来ず、私は思わず 「欠陥隠しをしたんじゃないのか」と怒鳴ってしまった。
怒鳴ってしまったことは悪かったので 後にA氏には謝ったが、その時はかなり頭に来た。

さっそく、東京本社の相談部に宛てて抗議の手紙を書き、11月3日に投函した。
手紙の中で、欠陥が放置されたことに抗議し、今からでもきちんと修理対策を取るよう要求した。 さらに、怒りにまかせて損害の補償を要求した。 クローセンシステムの欠陥に関しては、バッテリー上がりを起こしていたし、自力で設計ミスを解明するまで 負担や出費を強いられていたからである。


■ 「誠意を伝えたいので会って下さい」と、ホンダは何度も言った

何日かして、A氏から電話があった。 私の抗議の手紙が東京から大阪の相談部に回されてきたとのこと、そして、一度会ってお話したいとのことであった。
しかし、私はお断りした。 「時間が惜しいので 会って話すのは気が進まない、話があれば電話でしましょう」と伝えた。

その当時、ホンダの人と会って話す必要性は感じなかった。 手紙の中では きつい調子で抗議しておいたので、きちんと修理対策を取ってもらえるものと確信していた。 抗議を受けても欠陥を放置し続けるほど、ホンダがふてぶてしいとは思えなかった。 国際的な優良企業であるからには、品行方正に振舞うはずと考えていた。

また、手紙の中では補償の要求もしてあったが、これは二の次の問題であった。 修理対策に関しては 多くのユーザーにかかわる問題であったが、補償の方は私の個人的なことであり どうにでもなった。
従って、直接会うまでもなく、電話で少し話す程度で問題は片付くものと思っていた。

今から思えば、当時の私は、ホンダをイメージでしか知らなかった。 その良好なイメージに惑わされて、モラルが高くユーザーフレンドリーな企業と思い込んでいた。
確かに、クローセンシステムの欠陥は8ヶ月間放置されてはいたが、それは一部の人が内々にしてしまった結果と理解していた。 つまり、ホンダ(アクセス)の一部の人が 社内的に欠陥を隠したのであり、しかるべき部署が報告を受けていれば きちんと対処されていたはずと思っていた。
私が抗議の手紙を東京本社の方に送付した理由も、本社のしかるべき人が事実を知れば きちんと対応がなされるものと考えたからである。

このような訳で、抗議の手紙を出しただけで問題は片付くものと思い込んでいた。
従って、A氏から 「会ってお話したい」と言われても 特に会う必要性は感じなかった。 お互いに時間を無駄にしない為にも、「話なら電話で済ませましょう」と伝えたのであった。

ところが、数日してA氏から再び電話があり、また 「会ってお話したい」と言ってきた。 A氏によれば、東京の方にいる担当者が 「直接会って誠意を伝えたい」と言っている、とのことであった。
A氏は 「直接会わなければ誠意が伝わらない」と何度か繰り返していたが、やはりお断りした。 「わざわざ東京から大阪まで来て頂く必要はない、こうやって電話で意思疎通ができるのだから 電話でお話しましょう」と伝えた。

数日後、またA氏から電話があり用件は同じであった。 東京の担当者が 「直接会わなければ誠意が伝わらない」と言っているので、是非会ってもらいたい、とのことであった。
今回も始めは断っていたが、何度も 「直接会って誠意を伝えたい」と言われるに及んで、会わないわけにはいかなくなった。 誠意を無下に拒むのもどうか、という気になってしまった。
そこで、11月16日の昼から私の自宅に来られることになった。

ホンダが 「誠意を伝えたいので会って下さい」と何度も頼み込む以上、きちんとした修理対策が取られることは当然のことと思えた。 その上で、私に迷惑をかけたことや欠陥を放置したことに対して、直接会って謝罪をしたいのだろうと推測した。


■ 「誠意を伝えたい」という話は全くの嘘だった

ところが、ホンダ側と実際に会ってみると、その対応は誠意から程遠いものだった。 「直接会って誠意を伝えたい」という話は全くの嘘だった。 それは、私を話し合いの場に誘い出す為の口実でしかなかった。
ホンダのねらいは、私に直接会って修理対策の要求を封じることであった。 話し合いの場では、やり込める、押さえ込む、黙らせる、といった対応を受けることになった。

クローセンシステムの設計ミスは明白で ホンダ側も否定することはなかったが、私が修理対策の必要性を話せば ことごとに嘘、屁理屈を浴びせかけて来た。
結局、話し合いは3度に及んだが、最後まで私が折れないので、ホンダは 「クローセンシステムのことは欠陥とは思っていない、修理対策を取る意思もない」と完全に居直って話し合いを打ち切った。

話し合いが打ち切られて9ヶ月程経った頃、この欠陥問題が月刊誌に掲載され、ホンダは豹変することになる。 欠陥クローセンシステムに対して改善対策を取ることを表明し、運輸省(国土交通省)に市場措置を取る旨の報告を上げた。

ホンダの表裏の差は大きかった。 問題が記事になり あわてて市場措置が打ち出されることになったが、私がひとりで対応していた時には、市場措置を要求して クレーマーの如く扱われた。
以下、ホンダとの3回の話し合いの模様を書いていく。


■ 最初の話し合い (1) − 嘘、屁理屈を浴びせかけられて

平成3年11月16日、ホンダ側担当者3名が私の家に来られた。
ひとりは既に電話で話をしたA氏(ホンダお客様相談部 大阪 主任)。 そして、ホンダアクセス サービス部 市場サービス課 主査のB氏。 この方の勤務地は埼玉県であるが、わざわざ遠路来られたようである。

このA、B両氏が3度にわたって来宅されることになったが、今回に限って書記役の方が来られていた。 名刺は頂いているが、ほとんど話されることはなかった。

挨拶の後、B氏から クローセンシステムに関して迷惑をかけたことへのお詫びと、設計上の問題を見つけてくれたことへの御礼の言葉があった。 この間20秒位であろうか、合計3度の7時間に及ぶ話し合いのうち、それなりの謝罪や感謝の意が表されたのはこの時だけであった。 それも、挨拶の続きと言っていいようなものであった。

B氏の言葉の後、私がまず言ったことは 「手紙の中できつく抗議しすぎた」という反省の弁であった。
抗議の手紙は欠陥放置を知った直後に書いたものであり、怒りにまかせて表現がきつくなりすぎていた。 投函後少々後悔の念を抱くようになっていて、そのことを口にしたのである。

この反省の弁に対して、B氏が言ったことは 「私ならもっと書きます、もっともっと書きます」という言葉だった。 この発言からすれば、手紙の趣旨は理解されたようであった。 従って、修理対策に関しても きちんとした措置が提示されるものと予感した。

しかし、すぐにA氏から聞かされたことは、「ホンダとしては修理対策の必要はないと判断している」との言であった。
「確かに、設計段階で絶縁対策を忘れ 常に電気が流れ放しになっていることは認めるが、何か問題が出るわけではない。ユーザーに損害や迷惑を与えているわけではないので、修理対策を取る必要性はない」との言い分であった。

実際にクローセンシステムの欠陥に悩まされた者として、ホンダ側の言い分は受け入れられるものではなかった。
抗議の手紙の中で、バッテリー上がりを起こしたこと、それを証明するJAFの書面を持っていることは伝えてあった。 また、バッテリーの上がり易さはかなり気になり、充電器を購入したり、何度もディーラーに相談に行ったことも伝えてあった。
さらに、常識的に判断して、本来の暗電流(キーOFFでの電流)の何倍もの電流が流れ放しになっているのに、問題が出ないはずはない。

にもかかわらず、担当者が持参した結論は、「ユーザーに損害も迷惑も与えていないので、修理対策の必要性なし」というものだった。
ホンダ側としては、修理対策を取らずに済ませたい、その為にはユーザー側の被害を認めるわけにはいかない、という図式だった。

念の為に書いておくが、私の被害をホンダ側が疑っていたわけではない。
A氏はディーラーに問い合わせ、私がバッテリー上がりの件で何度も相談に行ったことを確認していた。 また、クローセンシステムの設計ミスが判明する以前に、バッテリー上がりで困っている旨の手紙をホンダ相談部に出したことがあり、その手紙も読んでいた。 さらに、話し合いの場で バッテリー上がりを証明するJAFロードサービス書も提示した。
それにもかかわらず、A氏は 「損害も迷惑も与えていない」と言い張った。 事実を承知しながら、終始しらばくれ、はぐらかす態度であった。

「誠意を伝えたい」と言って私の家にやって来て、ホンダが示した対応は不誠実そのものであった。
クローセンシステムの欠陥による損害、迷惑に対して、きちんとした謝罪があるものと思っていたが、その事実さえ認めようとはしなかった。 その事実を認めれば、修理対策の必要性も認めることになるからである。

ホンダの対応を交通事故の場合に例えるなら、相手に車をぶつけておきながら 知らぬ存ぜぬを押し通すことである。 客観的証拠も揃っているのに、しらばくれ 謝りもせず 弁償もしない。
交通事故に会い、加害者からこのような対応を受ければ 腹立たしい限りであるが、ホンダが示した対応はまさにこれであった。

ここで、ホンダ側のスタンスを確認しておく。
既に述べた通り、設計ミスに関しては否定することはなかった。 設計段階で絶縁対策を忘れた為に 装置が常に作働状態になり、車を使わない時にも電気が流れ放しになる、このことは9ヶ月前に既に認めてしまっていた。 私に対してだけではなく 私のディーラーに対しても認めており、今更否定することは出来なかった。
しかし、このように設計ミスを認めた上で、ホンダは 「修理対策の必要性なし」と主張した。 その際、主張の根拠としたのが、「設計ミスがあってもユーザーに損害も迷惑も与えてはいない」という言い分である。

私自身がバッテリー上がりを起こし バッテリーの上がり易さに悩まされた以上、その言い分は事実ではなく嘘、屁理屈の類である。 そのことは、当然ホンダ自身も分かっていることである。
しかし、ユーザー側の被害を認めれば 修理対策を迫られることになり、如何にバカバカしい言い分であろうと、ホンダとしては押し通すほかなかった。

それ故、ホンダ側の嘘、屁理屈、事実無視には凄まじいものがあった。
既に書いた通り、私の個人的な損害、迷惑については無視され続けたが、クローセンシステムのユーザーが その欠陥によってバッテリー上がりを起こす可能性さえも認めようとはしなかった。 暗電流が何倍にもなることを認めながら 被害は出ないとの主張である。
以下、このやり取りを書いておく。

車のキーがOFFでも 欠陥クローセンシステムには電気が流れ続けるが、その電流値が36mA程であることは、ホンダ側も認めるところであった。 また、車の元々の暗電流(キーOFFで流れる電流)が 9mA〜18mA位であることも、ホンダ側の認めるところであった。
そして、これらの数値から計算すれば、バッテリー上がりまでの放置日数が 欠陥クローセンシステムの為に 5分の1〜3分の1に短縮することも、渋々認めるところであった。

そうなると、例えば1ヶ月放置すればバッテリーが上がる車を想定した場合、これに欠陥クローセンシステムを装着すれば 6日〜10日の放置で上がることになる。
この例え話についても渋々認めてはいたが、「表現の仕方が嫌だ」とのことであった。 そこで、B氏が持ち出したデータが、「新品で満充電のバッテリーの場合 欠陥クローセンシステムを装着していれば 20日〜25日の放置で上がりを起こす」というものだった。 どうやら、例え話の中の 「6日〜10日の放置でバッテリーが上がる」という表現にカチンと来たようであった。

ホンダ側としては 「20日〜25日放置していても大丈夫」と言いたかったようであるが、実際には 「新品で満充電という最高の条件下でさえ その程度しか持たないのか」というのが、一般的な見方であろう。
いずれにしろ、クローセンシステムに欠陥がなければ 20日〜25日の3倍〜5倍の日数、即ち2ヵ月以上放置していてもバッテリー上がりは起きないのである。 クローセンシステムの欠陥がバッテリー上がりをひどく早めてしまうことに変わりはない。

以上、どの程度バッテリーが上がり易くなるかについて、ホンダ側も認めていたことを書いた。
これらのことからすれば、欠陥クローセンシステムを装着していた為にバッテリーが上がったというケースは、いくらでも出て来るはずである。
ところが、この当然予想される話を ホンダ側は認めようとはしなかった。 ホンダ側が示した対応は、「そんな話はしたくない」というもので、話題にすることの拒否であった。 A氏は 「タラ、レバの話はしない」と何度も言ったが、不毛な仮定の話であるとして 取り合おうとはしなかった。

しかし、設計ミスによってバッテリーが上がるというのは 現実に起こりうる話である。 明白な予見可能性があり、不毛な仮定の話ではない。
そのことを説明しようとしても さらに屁理屈を浴びせかけられ、最後まで話題にさせてもらえなかった。
このような忌避の理由は明白である。 話題にすることを許せば、設計ミスによってバッテリー上がりが起きることを認めるほかなく、ひいては、修理対策の必要性も認めざるを得なくなるからである。

以上書いてきたように、私自身がバッテリー上がりを起こした事実については完全無視。 ユーザーがバッテリー上がりを起こす可能性については取り合わない。 こうしてホンダ側が出した結論は、「設計ミスがあっても ユーザーに損害も迷惑も与えていない」というものだった。 そして、これを根拠に 「修理対策は必要なし」との主張であった。
ここまで酷い議論もないが、このような「論理」を使えば どのような欠陥も対策不要となってしまう。 後にも先にも これほどバカバカしくイライラする話し合いをしたことがない。


■ 最初の話し合い (2) − 屁理屈をかいくぐって




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「欠陥を巡るホンダの対応」の詳細版として、このページを作ったのですが、この先続けるのが少々面倒になって来ました。 基本的なことは概要版に書いてある通りです。

しかし、概要版の最後の部分は 少し補っておいた方がよいかもしれません。 概要版の終わりで話題にしたことは、「クローセンシステムの欠陥に関して ディーラーに事実は伝えられているのか」でした。 何故そのような疑問を持つようになったかを 以下に書いておきます。


■ ホンダは 設計ミスの事実をディーラーに伝えたか

平成11年11月、このホームページを作る8ヶ月前のことであるが、ホンダディーラーの整備士さんと話す機会があった。 彼と話すのは初めてであったが、確かに彼はクローセンシステムに問題があることを知っていた。

その時 私が思ったことは、
「クローセンシステムの欠陥に対して まともな市場措置は取られなかったが、不具合があることについては ディーラーに一応は伝達されたようだ。」

しかし、意外なことに、彼には次のように叱責された。
「2、3個の製品に問題が出たからといって 全ての製品を回収する必要があると思っているのですか。」

的外れなことを言ってるなと思いつつ、私は「設計上のミスだから全ての製品の回収が必要」とのことを言った。
彼の方は納得しなかったようで、お互い「物分かりの悪い奴」と思いながら 短い話し合いは終わった。

今から思えば、クローセンシステムの不具合が何であるか、お互い確認し合うべきであった。 私は ホンダが事実をディーラーに伝えているものと思い込んでいたし、彼は彼で事実を知らされていると思い込んでいたようである。

この話し合いの8ヵ月後、私はこのホームページを開設。 その1ヶ月後、ある掲示板で このホームページが話題になっていて、一つの書き込みが目に留まった。 そこには、「クローセンシステムで電気が流れ放しになるのは リレーが故障し易いから」とあった。

書き込み内容から察するに、書き込んだ人はホンダディーラーの整備士さんのようであった。 アコードインスパイアをE−CB5と型式で表現し、クローセンシステムで電気が流れ放しになる理由を説明していた。

当時、このホームページは作り始めたばかりの頃で、極端に言えば「クローセンシステムという製品に 電気が流れ放しになる欠陥があります」という程度の内容であった。 書き込んだ人は その原因がリレーの故障にあることを教えたかったようである。

この書き込みを見て、私の中で「ホンダはディーラーに事実を伝えていないのではないか」という疑念が生じた。 設計ミスにより全ての製品で電気が流れ放しになっている事実を隠し、リレーの故障により電気が流れ放しになることがあるという軽微な問題にすり替えたのではないかと。 そう考えると、9ヶ月前の整備士さんの話が全て理解できた。

クローセンシステムの欠陥というのは、ECUを絶縁なしでボディに取り付けるよう設計した為、ECUが常時作働状態になってしまうことであった。 修理としては きちんと絶縁を施せばよいのであるが、作業性等の問題から 新たにリレーを組み込む方法が採用されている。

この修理方法では、不具合の原因を偽ることが可能である。 「元のリレーが故障してONのままになり、電気が流れ放しになることがあるので、新たにリレーを組み込む」といった説明が出来る。
設計ミスにより全ての製品で電気が流れ放しになっていることを隠す為に、リレー(三菱電機製)が故障すると偽り 軽微な問題に見せかけることが出来るのである。

このホームページ開設以来2年、人からメールを頂くこともあり、疑念であったものは確信となった。 機会があれば、直接ホンダに問いただしたいと思う次第である。

( 注 )
設計ミスをリレーの故障問題にすり替えた疑惑については、平成14年11月、ホンダへの質問状の中で尋ねてみた。 詳しいことは、トップページ目次の「終わりに − ホンダへの質問状」にあります。

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