続・終わりに − 国土交通省への要望書

 

 

クローセンシステムは、エンジンがかかると作働するように設計されている。 システムにはリレー(スイッチ)が組み込まれていて、このリレーがエンジンのかかったことを感知すると、システムに電気を流す仕組みである。

ところが、設計段階で絶縁対策を忘れた為、リレー(スイッチ)に関係なくシステムに電気が流れる。 エンジンがかかっていなくても、システムは常時作働状態になってしまう。
車のキーを切った状態で流れる電流を暗電流というが、クローセンシステムの欠陥によって、暗電流は本来の3倍から5倍になる。 バッテリーは1週間程で1ヶ月分も放電する。

クローセンシステムのユーザーの間でバッテリー上がりが頻発することは明白である。 さらに、バッテリー上がりという症状が出ても、クローセンシステムの欠陥は簡単には分からない。 ディーラーに相談しても、ディーラーの通常の対応ではクローセンシステムの設計ミスは分からないであろう。 結局のところ、ユーザーはバッテリー上がりを心配しながら、車を使い続けることになる。

クローセンシステムの設計ミスが判明した時、数千個(ホンダによれば1801個)の欠陥クローセンシステムがユーザーに渡っていた。
きちんとした修理対策が当然に必要であったが、ホンダは放置することを選んだ。 ユーザーに被害が出ていることを認識しながらの放置である。

私が抗議すると、逆にクレーマー扱いである。 ホンダは、「クローセンシステムのことは欠陥とは思っていない、修理対策を取る意思もない」と言い放った。
しかし、問題が雑誌に掲載されると、ホンダは豹変、国土交通省に市場措置を取る旨報告を上げた。

しかし、ホンダが考えたことは、本当に市場措置を取ることではなく、市場措置を取ったように装うことだった。
販売店に通達が出されたが、欠陥は隠蔽され、まともな措置も取られてはいない。 設計ミスによって全ての製品で電気が流れ放しなっている事実は、ディーラーにもユーザーにも伝えられてはいない。


これらが、ホンダがして来たことである。 しかし、ホンダには反省のかけらもない。
ホンダが欠陥を放置したことにより、多くのユーザーがバッテリー上がりに悩まされていた。 ユーザーに申し訳ないと思うのが本当ではないのか。 自らの非をきちんと認めるべきであろう。

しかし、ホンダに何を言っても仕方がない。 ホンダがクローセンシステムの欠陥の放置を決めた時、ユーザーの被害が拡大することは承知の上だった。 始めからユーザーを犠牲にするつもりの企業である、私が反省を求めたところで どうなるものでもない。

平成15年5月10日、下の書面を国土交通省に送付。 ホンダに何らかの対応を取って頂くよう求めた。 (内容証明書用紙に記載したが、配達記録にて送付)

− 国土交通省への要望書 −
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■ 国土交通省からの書面

平成15年6月19日、国土交通省から書面届く。

国土交通省御中
御返答有難うございました

車の不具合の市場措置には、リコール、改善対策、サービスキャンペーンの3種類がある。 不具合が道路運送車両の保安基準に抵触する場合はリコール、保安基準に触れないものの安全や公害防止上問題がある場合は改善対策、商品性不具合の場合はサービスキャンペーンとなる。

クローセンシステムの設計ミスについては、商品性不具合とは言えないものの、市場措置としてはサービスキャンペーンが妥当であろう。
商品性不具合ではないと言うわけは、設計段階で絶縁対策を忘れるという あるまじきミスであり、多くのユーザーに被害が出るからである。 このような不具合を商品性の問題と言うのは無理であろう。 しかし、リコールや改善対策に該当しない場合は、サービスキャンペーンでの対応となる。

以上のことについては、以前ホンダから送って頂いた下の書面が参考になる。 三つの市場措置についての説明があり、クローセンシステムの不具合がサービスキャンペーン相当である旨の記述がある。

しかし実際には、ホンダは偽りの理由をつけてサービスキャンペーンを実施しなかった。 上の書面によれば、サービスキャンペーンとしない理由として、クローセンシステムによるトラブルは4件だけで発生率が少ないとあるが、これは事実ではない。 実情は、数多くのトラブルが発生していたにもかかわらず、ディーラーでさえもクローセンシステムの欠陥が分からない為、4件しかメーカーに上がらなかったということである。

バッテリーが1週間程で1ヶ月分も放電すれば、ユーザーの間でバッテリー上がりが頻発することは、ホンダも分かっているはずである。 しかし、ユーザーがディーラーに相談しても、クローセンシステムの設計ミスは分からない。 ユーザーが「バッテリーが上がり易い」と苦情を言っただけでメーカーに上がるはずもなく、トラブルが発生していてもメーカーに上がらないまま終わるのである。 ( 詳しいことは、 ホンダからの書面 の章にあります。)

以上のように、サービスキャンペーンをしなかった理由は事実ではなく、本当はサービスキャンペーンを実施するべきであった。 実際、下のホンダのサイトのページを見れば、クローセンシステムと全く同じ問題で、最近サービスキャンペーンが実施されたことが分かる。 最近は企業倫理や内部告発が社会問題になっている為、ホンダも放置できなかったのであろう。

  http://www.honda.co.jp/recall/campaign/030130.html

詳しいことは、 オデッセイ等のサービスキャンペーンに関して の章を見て頂くとして、クローセンシステムの欠陥の方が上のページの欠陥より重症である。 従って、上のページの問題でサービスキャンペーンが実施されたのなら、当然クローセンシステムの場合もサービスキャンペーンできちんと対応するべきであった。

しかし、ホンダがサービスキャンペーンの代わりにしたことは、市場措置を取ったように装うことでしかなかった。 上の書面によれば、サービスキャンペーンの代わりに販売店にサービスニュースを発行して対応したとのことである。 しかし、クローセンシステムの設計ミスは伝えられず、全ての製品で電気が流れ放しになっている事実は隠され、まともな市場措置も取られてはいないのである。


さて、国土交通省にお送り頂いた書面である。 それによれば、商品性不具合の場合、市場措置を取るかどうかはメーカーが独自に判断すればよいとのことである。 私はクローセンシステムの設計ミスを商品性不具合とは思っていないが、国土交通省によれば、クローセンシステムの場合も同様にメーカー次第とのことである。

ユーザーの被害を認識しながら欠陥を放置するとしても、法令上の問題はないようである。 現に被害が頻発している状況で欠陥を放置するのは極めて悪質であるが、取り締まる制度がなく、モラルや良識の問題として扱うほかないようである。 そして、このような道義的な問題には、メーカーの対応が如何に悪質であっても、国土交通省は対応されないようである。

結局のところ、クローセンシステムの欠陥問題に関する限り、ホンダにはモラルも良識もなく、取り締まる制度もなく、国土交通省の対応もないという状況である。 ホンダのやりたい放題、ユーザーは欠陥製品に泣かされたまま終わることになる。

ちなみに、もしクローセンシステムの欠陥が簡単に分かるような欠陥なら、ホンダもきちんとした市場措置をしていたであろう。  バッテリー上がりの原因としてクローセンシステムの欠陥が簡単に分かるのであれば、すぐさまメーカーの責任問題となるからである。 書面にもある通り、製品の欠陥によって被害が出れば補償問題に発展し、そうならないよう、ホンダも進んで回収を行っていたであろう。

しかし実際には、クローセンシステムの欠陥は簡単には分からないと来ている。 バッテリー上がりの症状が出ても、ユーザーにもディーラーにもクローセンシステムが原因とは分からないのが実情。 ユーザーに被害が出ても メーカーの責任が追求されることはなく、ホンダは悠々と欠陥を放置し、ユーザーの被害が回復されることもないのである。


■ 国土交通省からの書面 − 誤解があるとの御指摘ですが

最後に、国土交通省からの書面の前半部分に触れておかなければならない。 平成4年10月にホンダが運輸省に行った報告の中の市場措置について、再度確認するようにとのことである。 早い話、私に誤解があるとの御指摘である。

この市場措置については、平成13年1月に国土交通省から頂いたメールの中に出て来る。 下の画像の中の 「本田技研工業は・・・ホンダアクセスに対して・・・市場措置をするように指示した」という個所である。
国土交通省によれば、この市場措置は平成4年7月の市場措置を指すという。 私は新たな市場措置を取る旨の報告と理解したが、それは誤りだとの御指摘である。

突然に平成4年の報告や市場措置が出て来て、話が分かりにくいかもしれない。 誤解うんぬんの話をする前に、以下、ホンダが運輸省に報告を上げるまでの経緯を簡単に振り返っておく。

平成4年4月のこと、私は自動車評論家のT氏に連絡を取り、ホンダがクローセンシステムの欠陥を放置していることに意見を求めた。 有り難いことに、T氏はホンダに市場措置をするよう働きかけて下さり、7月に市場措置が取られることになった。 しかし、その市場措置なるものは、実効性がないことは明らかで実質上は放置だった。

しばらくして、クローセンシステムの欠陥問題が月刊誌(9月26日発売)に掲載された。 その記事の中では、7月の市場措置が見せかけでしかないこと、きちんとした措置が必要であることも記載された。 発売日翌日の27日には、ホンダは早々と、新たな市場措置を取る旨を表明した。

直後の10月、ホンダは運輸省にクローセンシステムに関する報告を上げ、その報告の中で、上記の通り 「本田技研工業は・・・ホンダアクセスに対して・・・市場措置をするように指示した」と述べた。
その後、ホンダはもう一度市場措置なるものを行なった。

以上が、ホンダが運輸省(国土交通省)に報告を上げるまでの経緯であるが、問題は、その報告の中の市場措置が何を指すのかである。

もし、それが7月の市場措置である旨明記されているのなら、もちろん、国土交通省の御指摘が正しい。 しかし、その場合には、何の実効性もない7月の市場措置をもって、ホンダは対策済みを主張したことになり、ホンダの出鱈目さを示すことにもなる。
反対に、7月の措置である旨明示されていないのなら、新たな市場措置を取る旨を表明したと考える方が自然である。

私は当時の状況を知る者として、実情は後者であったろうと考えている。 7月の市場措置が誤魔化しでしかないことは誰の目にも明らかで、ホンダも新たな措置を取ると表明していた。 従って、国土交通省にも その旨を報告したと考えるのが自然であろう。 実際、その後、もう一度市場措置を取ってもいる。( 実際には、市場措置を取ったように装ったと言うべきであるが。)

結局のところを言えば、国土交通省の御指摘が正しくても正しくなくても、ホンダの出鱈目さを示すことに変わりはない。 見せかけだけの7月の市場措置をもって、国土交通省に市場措置を取ったと主張したのか、それとも、新たな措置を取る旨を報告し、その後もまともな措置を取らなかったのか、どちらに転んでも同じようなものである。

しかしながら、国土交通省の御指摘に反して、このホームページが後者の見方を取る以上、その根拠をきちんと示しておくべきであろう。


まず、平成4年7月の市場措置というのは、どのような措置であったのか。
上に掲載の ホンダからの書面 には、ホンダは92年(平成4年)7月に販売店にサービスニュース(用品サービスニュース)を発行し修理対策を取った旨が記載されている。 従って、そのサービスニュースを見れば、どのような措置が実施されたかが分かる。

しかし、ホンダはその内容を明らかにしようとはしない。 しばらく前に、サービスニュースの内容を開示するよう、ホンダに書面で求めた。 内容証明まで出して数度に渡って求めたが、無視されただけだった。 従って、サービスニュースの正確な内容は分からない。

しかし、その概要については、ホンダ側からの書面で分かっている。 下の書面を見ての通り、「お客様が販売店に来場された機会をとらえ、当該クローセンシステム(リア)が装着されている車に対して、暗電流防止の処置を講じる」との内容である。

話を進める前に、上の書面の日付が8月になっていることに説明を入れておく。 というのも、上の書面が「これから市場措置を取ります」という内容であるにもかかわらず、書面の日付が8月、市場措置の実施が7月というのでは矛盾してしまうからである。

この7月の市場措置が、自動車評論家のT氏の働きかけで実現したことは上に書いた通りであるが、ホンダは6月の段階で、上の書面と同内容のものをT氏に提示していたのである。 しかし、私には何らの連絡もなく、T氏の働きかけで、8月になって上の書面が私のところに送られて来たわけである。

下の画像は、この経緯を示すものである。 左側は、7月にT氏から頂いた手紙、右側は、同封されていたホンダアクセスの書面である。 この書面は、感熱紙によるコピーのため薄くなっているが、日付がない以外は上の書面と全く同内容である。

  

話を元に戻し、7月の市場措置の概要が分かったところで、問題はその実効性である。
欠陥クローセンシステムが修理されるとして、たまたま販売店に来たものだけが対象、そして、たまたま販売店に来ても、クローセンシステム装着車は外見上全く分からない。 販売店がサービスニュースを見ても、覚えているのはしばらくの間だけ。 果たして、このような措置に実効性はあるのか。

さらに言えば、比較的最近になって分かったことは、サービスニュースの中で設計ミスが伝えられていないことである。 全ての製品で電気が流れ放しになっている事実は巧妙に隠されているのである。
結局のところ、7月の市場措置は、市場措置を取ったように見せかける為のもので、実質上は放置である。

国土交通省の御指摘が正しいのなら、ホンダは このような市場措置をもって「市場措置を取りました」と運輸省に報告していたことになる。 これは ほとんど虚偽報告、運輸省を欺くものである。 国土交通省の御指摘通りなら、逆にホンダの酷さに驚いてしまう。

以上のように、7月の市場措置の欺瞞性は明らかであるが、そのことは月刊誌11月号の記事でも指摘されている。 著作権を侵すようなことはしたくはないが、幸い私の発言がそのまま載せられており、下に掲載させて頂く。

  

著作権の問題で記事の大半は伏せさせて頂いたが、ホンダが新たに市場措置を取る旨表明せざるを得ない状況に追い込まれたことは、分かって頂けるであろう。 実際、月刊誌発売日翌日の9月27日、ホンダ相談部に電話したところ、ホンダからは早々と、新たに市場措置を取る旨の表明があった。

その電話では、私は名乗ることなく、単なる月刊誌の読者として記事について尋ねた。 相談員は間髪いれずに、「事実関係は記事の通りでいいようです。 ホンダと致しましては、運輸省とも相談の上、改善対策を取る方針です。」と答えた。 その対応振りからは、問い合わせに備えての対応が、相談員の間で徹底されていたようである。

さて、このような状況の中で、ホンダは運輸省にクローセンシステムについての報告を上げ、その中で、「本田技研工業は・・・ホンダアクセスに対して・・・市場措置をするように指示した」と述べたのである。 話の流れからすれば、新たな市場措置を取る旨の言及と解するのが自然であろう。

月刊誌の記事の内容は、「ホンダはクローセンシステムの欠陥を放置している、7月の市場措置も誤魔化しだ」というものである。 そして、7月の市場措置が誤魔化しでしかないことは誰の目にも明らかである。 従って、月刊誌発売の直後に、ホンダが運輸省に、「本田技研工業は・・・ホンダアクセスに対して・・・市場措置をするように指示した」と報告したのなら、新たな市場措置の話としか理解できないのである。

実際、その後、ホンダはもう一度市場措置なるものを行っている。 正確には、市場措置を取ったように装ったと言うべきであろうが、上に掲載の ホンダからの書面 にある93年(平成5年)5月の市場措置のことである。

ちなみに、平成5年5月と言えば、クローセンシステムの問題が記事になり、ホンダが新たな市場措置を取る旨表明してから8ヶ月も経つ。 この間ホンダは何をしていたのかとの疑問が出るであろう。
少し余談ながら、運輸省への報告以降のことにも触れておく。

月刊誌に関しては、平成5年1月号(平成4年11月26日発売)でもクローセンシステムの問題が取り上げられた。 この号でも、編集部はさらに取材を続ける旨表明し、メーカーを追及する姿勢を見せている。

この1月号の発行の後、私はホンダ相談部に電話をして、「改善対策の話はどうなっているのか」を尋ねた。 対応に出たのは この問題の担当者のA氏であったが、「ユーザーに直接連絡を取って修理しますので、現在、問題のあったクローセンシステムの購入者をリストアップしています」とのことであった。

改善対策が表明されてから2ヶ月以上も経っているのに まだそんな段階なのか、という思いがよぎったが、準備を進めているとのことであり、そのうち対策がなされることに疑いを持たなかった。 従って、これ以降、ホンダに問い合わせを行うこともなかった。

月刊誌の方も、平成5年1月号を最後に、クローセンシステムの問題を取り上げなくなった。 そして、上記のように、平成5年5月、ホンダは市場措置を取ったように装う。 販売店にサービスニュースを発行したとのことであるが、設計ミスは隠蔽され まともな措置も取られてはいない。

結局のところ、ホンダは雑誌社の追及が止むのを待っていたようである。 雑誌社の追及がある間は 「市場措置の準備を進めている」と言って誤魔化し、追求しなくなったのを見て 誤魔化しの市場措置を行い対策済みとしたのである。

ホンダが本当に市場措置を取るつもりなら、8ヶ月も待つことはなかった。 クローセンシステムは電気が流れ放しになっており、その間にも多くのユーザーがバッテリー上がりに悩まされていたのである。

ホンダは最後の最後まで汚かった。


■ 終 わ り

以上をもって、このホームページに終止符を打つことにします。 今後、特別なことがない限り、更新することはありません。 ( 平成15年7月7日 記 )


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